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  • 執筆者の写真yasaka

学習障害(LD)のサイン 〜就学前こそ手立てを

更新日:2023年9月21日

 就学前の幼稚園児で、L D(学習障害)を指摘されることはあまりないと思います。しかし、単語や文を書く様子、発音の様子からL Dのサインはキャッチできます。その場合、就学前に音韻認識を高め、早くに対処しておくことは大切です。実際私は、幼稚園児であってもL Dの疑いを感じれば、保護者と話し合って改善するべく指導を始めます。

 では、どのような様子があればL Dの疑いがあるのか。いくつか傾向があります。

例えば、次の写真の書字をご覧になってください。これは年長児(6歳)のお子さんが書いたものです。

 このお子さんは、促音(「っ」 つまる音)や長音(伸ばす音)を全て間違えており、正しく書けていません。拗音(「しゅ」や「しょ」などのひねる音)も間違えています。これは、音韻認識や空間認知が弱いからだと言えます。音声を伴わない詰まっている空間や、音が伸びている空間を認識できないのです。また、拗音のように、一つの空間に音が二つ入っているものも認識しにくいのです。


促音と長音がうまくかけていない例(上の写真):

 ○ブロッコリー →✖️ブロコッリ

 ○鉄橋(てっきょう)→✖️てきょ

 ○特急(とっきゅう)→✖️ときゅ

 ○食器(しょっき)→✖️しゅき

 ○一緒(いっしょ)→✖️いしょ


また、音をうまく弁別できていなかったり(「ち」→「し」)、音節の入れ替わり(「ちき」→「きし」)も見られます。下の写真の「ホッチキス(ほっちきす)」の箇所を見るとわかります。  ○ほっちきす→✖️ほっきし


またこのお子さんは、発音についても、正しく発音できない音があります。特に、「さ、す、そ」が「しゃ、しゅ、しょ」に置換します。また、ハ行の子音が抜けてサ行の音に置換したり(ひ→し)、ラ行の音をダ行と混同することもあります。正しく発音できないからこそ、書字についても間違えてしまいます。


 また、そもそも音を正しく聞き取れていないこともあります。これは耳の聞こえと関係ありません。聞こえているけど、正しく音を弁別できないのです。これは文字を書く段階になると明確に分かります。このお子さんの場合、「さ、す、そ」→「しゃ、しゅ、しょ」、「ぎゃ、ぎゅ、ぎょ」→「じゃ、じゅ、じょ」、「ちゅ→きゅ」「れ」→「で」などのように聞こえており、きちんと弁別できていませんでした。このようなお子さんはL Dの可能性が高いと言えます。文字を読むにも逐字読み(一文字一文字区切るように読んでしまう)になってしまいます。


 このようなL Dの傾向が感じられたら、年齢に関わらずすぐに手立てをとるべきです。聞き取りの訓練や、音韻認識を高める訓練などです。この写真の書字をしたお子さんは、訓練して2ヶ月近くですが、大分改善しております。ここでつまずいていると、作文や読解などでも当然ですがつまずきます。中学校入学後は、英語でつまずきます。学習が苦手な子は、基本的なことでつまずいているのかもしれません。アセスメントを取ることなく、ただ練習しても効果はないかもしれません。周りの大人が早くに気づき、正しい手立てを考えてあげられるといいと思います。

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